幸せの定義は「楽しみとしてやりたいテーマがあり実行していること」です。つまり、幸せになるためには、楽しみとしてやりたいテーマが必要です。しかし、これが意外と難しいと感じる人もいると思います。
最後は補足として、楽しみとしてやりたいテーマの探し方についてまとめました。これをヒントにして自分に合ったテーマを見つけていただけたら幸いです。
幸せのレベルは、「ワクワク感」「成長」「達成感」「思い出」の4つの指標を検討して算出することができます。楽しみとしてやりたいテーマ探しも、この4つの指標が高得点になることを意識します。
この4つの指標についてよく考えてみると「成長」「達成感」「思い出」は、テーマが実行された後に感じるものです。つまり、テーマを実行してみなければ、評価点は分かりません。そこで、楽しみとしてやりたいテーマを探すときは、実行する前の気持ちで点数が決まる「ワクワク感」を最も重視します。直感的に、そのテーマのことを考えるとワクワクするのであれば、ワクワク感は高得点になります。つまり、何かに対して「ワクワク感」があれば試してみる価値が大いにあるということです。
ワクワクするテーマを見つけるためには、次の3つの視点を意識して考えます。
① 題材と行動
② 個人か複数人か
③ 単発と継続
「題材」とは、好きなもののことです。たとえば、サッカーが好き、旅行が好き、動物が好き、演劇鑑賞が好きというように自分の好きなものが題材となります。
「行動」とは、たとえば、見る、応援する、プレーする、調べる、収集する、創作する、情報交換するなど、自分が好きな(できそうな)行動のことです。そして、楽しみとしてやりたいテーマは、題材と行動の組み合わせになります。つまり「題材×行動」の数だけあるということです。これだけあれば、自分に合ったテーマが見つかるかもしれないと期待が持てませんか。
題材に対する固定観念のような行動のイメージを取り払うことも大切です。たとえば、サッカーであれば、実際にプレーする、見る、応援する、グッズを収集する、などは行動の候補としてすぐに思いつくと思います。しかし、このような常識的な関わり方ではなく、もっと自分本位に考えると素晴らしいテーマが見つかるかもしれません。たとえば、歴史が好き、調べることが好き、旅行が好き、ということであれば、サッカーの歴史をコンセプトに、ゆかりの地を巡る、といったテーマは魅力的なはずです。
題材と行動を自由な発想で組み合わせることを意識すると、一つの題材でもさまざまな楽しみ方があることに気づくでしょう。
次は、一人で実行して楽しむのか、友人と楽しむのか、あるいはサークルなど複数の人と一緒に楽しむのかという人数に関する視点です。
たとえばサッカーの試合は一人ではできませんが、旅行は一人でも、複数の人と一緒でも楽しむことができます。
一人を好む人もいれば、賑やかな方が好きという人もいるでしょう。基本的には一人で活動して、たまに情報交換のために何人かで集まるというスタイルもあります。
テーマを決めるときには、一人で活動するのか、あるいは複数人と楽しみたいのか、といった人数や人との関わり方を意識することも大切です。もちろんテーマによって、必要な人数は変わってきますが、自分にとって心地よい人との関わり方について考えるのも大切なポイントです。
3つ目は、単発的なテーマか継続することを前提としているテーマか、という視点です。
たとえば、「豪華な旅行」が楽しみとしてやりたいテーマだとします。しかし、お金や時間のことを考えると頻繁に実行することは難しいと思います。幸せのレベル(「ワクワク感」「達成感」「成長」「思い出」の点数)は高くなるテーマかもしれませんが、単発に終わってしまったら、1回だけの高得点になってしまいます。単発的な高得点のテーマを実行するために生活費などを切り詰めてしばらく我慢する、という考え方もありますが、総合的に考えると、継続的に実行できるテーマも欲しいところです。
もちろん、お金と時間が許せば毎回高得点のテーマを実行することも可能かもしれませんが、テーマに慣れることによって「ワクワク感」「達成感」「成長」「思い出」の評価点が下がっていくことがあります。特に単発の豪華なテーマはこれが顕著です。つまり、毎回高得点を狙うのであれば、新鮮なテーマを考え続ける必要があります。この辺が、大金持ちだからといって必ずしも幸せではない、ということにつながるのかもしれません。
たとえば、継続してできる気軽な趣味のようなテーマがあれば、実行するたびに少しずつ幸せの得点が加算されていきます。継続的に実行できるテーマは一回一回の楽しみもさることながら、継続することによって深みを知る、あるいはそのテーマでのエキスパートになることにより、「達成感」や「成長」の得点が高くなります。理想は、継続してできる気軽なテーマと、たまに実行する単発・高得点のテーマの両方を持つことだと思います。
ここまで、楽しみとしてやりたいテーマを3つの視点から考えました。次は実際に自分に合ったテーマを探してみましょう。と言っても難しいことは何もありません。
まずは、自分が好きなもの(題材)をリストアップします。確実に好きでなくても、好きかもしれない、楽しそう、流行っているから一度やってみたいという軽い気持ちでOKです。「ワクワク感」を意識して、たとえば、次のように自由な発想で自分が好きなこと(題材)を書き出します。
・囲碁
・ウイスキー
・映画「男はつらいよ」
・中島みゆき
・競輪
・動物(犬、猫、馬)
・ポルトガル
・宇宙について
・カラオケ
・哲学
・散歩
・麻雀
・西洋絵画
・サプリメント
・南国への旅行
・桜
・ニンニク料理
・ガーデニング
これらは5分位考えて実際に思いついた私の好きなこと、やってみたいことです。自分の部屋の中にあるものをヒントにしたり、これまでの楽しかった思い出などを振り返ったりしながら思いついた順にリストアップしました。
次は、これらの題材に対して、「行動」をマッチングさせます。そして、いくつかマッチングをした結果、これは楽しそう、やってみたいと思えたものが「楽しみとしてやりたいテーマ」の候補になります。
題材は人によって変わりますが、「行動」は次の例を基本に考えると分かりやすいと思います。
・プレーする
・見る
・応援する
・聞く
・調べる
・記録する
・収集する
・情報交換する
・探索する
・企画する
・創作する
・食べる・飲む
たとえば、囲碁という題材に対して、プレーする、見る、応援する、聴く、調べる、記録する・・・という具合に行動をマッチングしていきます。「囲碁を聴く」というように題材と行動がマッチしない場合もありますが、気にすることはありません。ピンとこなければ、素通りすればいいのです。ちなみに「囲碁を聴く」は変な感じがしますが、囲碁のプロ棋士による対局を音楽に合わせて、見て、聴いて楽しんでもらう、という試みが実際にありました。クラシック音楽のリズムや雰囲気、強弱を囲碁の対局に合わせて演奏して、終局と同時に音楽も終わる。棋士と音楽家が同じステージで共演するという企画でした。
一つの題材に行動をマッチングするだけではなく、題材同士を組み合わせることも有効です。たとえば、囲碁とウイスキーを組み合わせる、囲碁と映画「男はつらいよ」を組み合わせるということです。囲碁と寅さんの組み合わせでは、何も発展しないと感じるかもしれませんが、意外な組み合わせが楽しいテーマとなることもあります。
インターネットなどで趣味の一覧を見ながら「特別にやりたいものはないなー」と思っていた人でも、自分の好きなことを中心に趣味を創造する、という気持ちで考えれば、自分に合ったテーマ、あるいは斬新でユニークなテーマに出会えるはずです。ポイントは題材と行動を結びつけてみて「ワクワク」するものがあったら一度止まって、さまざまな可能性を考えることです。
ここまで、楽しみとしてやりたいテーマの見つけ方をご紹介しました。気になる題材があればどんどん試してみてください。たとえそれが長く続かなくても問題ありません。気になったことを試すことに意味があるのです。
しかし、まだしっくりこない、考えるのが面倒だという人がいるかもしれません。そういう人のために、「ズバリこれはどうでしょうか」というテーマをいくつかご提案しましょう。
第一候補としてお勧めしたいのは「ペットを飼う」です。自分が好きな動物は無条件で可愛いと感じます。見ているだけでも癒されるペット、一緒に遊ぶことができるペット、いろいろありますが、ペットも飼い主も共に成長します。そして、育てる喜びや達成感を感じることができます。一緒にいる時間が長いので、たくさんの思い出もできるはずです。特に犬はペットの中でも高いコミュニケーション能力があります。意志の疎通ができるので心が通い合い、多くの人は犬に家族と同様の愛情を注ぎます。
ペットを飼うためには、ある程度の条件を整える必要があります。生き物なので責任も伴います。しかし、そういったことがクリアできるのであればペットによってたくさんの幸せを感じることができるでしょう。
ペットの代替案という訳ではありませんが、ガーデニングも育てる喜びを感じることができる素敵なテーマです。好きな植物を種から育てるためには、時間も労力も必要です。想定通りに成長しないかもしれません。しかし、花が咲いた時は、これまでの苦労や今後のさらなる期待感が相まって大きな喜びになることでしょう。ガーデニングは気軽にいろいろ試すことができるという魅力もあります。ペットは気軽に替えたり増やしたりすることはできませんが、植物はこの辺の自由度が高いので、さまざまな楽しみ方ができます。
食べることを目的に好きな野菜や果物を育てるのも素敵なテーマだと思います。育てる喜びだけではなく、とれたての新鮮な野菜や果物を食べることができるので一石二鳥のようなお得感のあるテーマですね。
日本には古い歴史があります。そして、昔から親しまれている素敵なテーマ(趣味)がたくさんあります。すぐに思いつくだけでも、たとえば、囲碁、将棋、相撲、盆栽、和歌、俳句、歌舞伎、工芸、華道、茶道など。あるいは、歴史について調べる、古典文学や芸術に触れる、お城や寺社巡りなども素敵なテーマです。
これらの素晴らしさを知り、楽しむことができれば、日本人としてのアイデンティティを確認することができます。そして、それは自分自身への誇りや自信にもつながるはずです。
ちょっとした教養というスタンスでもいいので試してみてはいかがでしょうか。
スポーツも多くの人が楽しんでいるテーマです。スポーツは観る楽しみもありますが、お薦めしたいのは実際に体を動かしてスポーツを楽しむことです。運動して心地よい汗をかけば誰もが「気持ちいい」と感じます。そして、食欲増進や快適な睡眠にもよい影響をもたらします。適度な運動は健康長寿にもつながります。
スポーツにおいて一番悩ましいのは何をやるかです。サッカーや野球はチームに入る必要があります。卓球やバトミントンも一人ではできません。必要な道具や場所のこともあります。
具体的に決めることが難しい場合は、とりあえずジムに入会することをお薦めします。つまり、体を動かす習慣をつけるということです。ウエイトトレーニングやランニングだけでなく、プール、ヨガ教室などがある施設もあります。
ジムは長く続けることを目的にします。昨日の自分がライバルだと想定してもよいでしょう。ジムでのトレーニングは、初めのうちはやった分だけ確実に成長します。タイムや重量など、定量的に成果が分かるのも嬉しいです。体が軽くなって日常的なパフォーマンスの向上や体形(見た目)の変化も自信につながります。そして、ある程度体力がつくと、別のスポーツをやりたくなるかもしれません。
運動は決して裏切りません。また、継続的に運動することは長い目で見ると幸せの累計得点が高くなるので自分に合った運動を見つけたいですね。
運動が苦手で、できれば汗をかきたくないと考えている人のために提案したいのは、哲学者になることです。体を動かすのが嫌だったら脳みその汗をかくのはどうかということです。
知的好奇心は人間の本能であると言えます。誰もが「知る喜び」を日常的に経験しています。「なるほど!」「そうだったんだ!」「やっと分かったぞ!」と感じるのは嬉しいものです。
お勧めしたいのは、簡単に答えが出ないテーマについて考えることです。最近は、インターネットをちょっと検索するだけでさまざまなことに対する答えを探すことができます。一定レベルの知的好奇心を満たすことはできますが、楽しみとしてやりたいテーマとしては、これでは物足りません。そこで、著名な哲学者のように「物事の本質や真理について考える」のです。
テーマは身近にいくらでもあります。たとえば、大笑いをしている人を見て「笑いとはなにか」、怒った上司を見て「怒りとは何か」、競馬で大当たりをして喜んでいる友人を見て「喜びの因果関係や種類について」、あるいは、仲の良い男女を見て「理想の夫婦とは」というように周囲を少し観察するだけでも、答えがなかなか出ない哲学的なテーマを見つけることができます。
このようなテーマについて一旦まじめに向き合うと「この考え方は普遍的だろうか」、「この場合はどうだろうか」、「〇〇には当てはまらない」、「犬や猫も同じだろうか」というようにさまざまな方向へ思考が飛びます。仕事と違って、納期や評価はありません。自分で好きに考えればよいのです。そして、ある程度考えがまとまったら親しい人に話をしてみてはいかがでしょうか。きっと別の意見や新たな問題提起がなされ、さらなる思考が必要になるかもしれません。
脳みそに汗をかくのは運動をして汗をかくのと同じような達成感があります。私も「幸せとは何か」について、哲学者になったつもりで断続的に1年以上考えました。一人で散歩をしながら、黙々と幸せについて考えているときはとても楽しかったです。そして、今後もさまざまな意見や批判を参考に、さらに考えを深めたいと思っています。
楽しみとしてやりたいテーマについて、いろいろとご紹介しました。それでもまだしっくりこない人、あるいはどれも面倒で重い腰が上がらない人は、「テレビやYouTubeを見る」だけでもよいと思います。
能動的に行動できないのであれば完全に受け身になるということです。ただし、一つだけアドバイスがあります。暇な時間にたまたま放映している番組を見るのではなく、楽しいと思った番組を継続的に見るのです。ドラマでもバラエティでもアニメでも歌番組でも、楽しいと思ったら継続的に見られるように録画予約します。
楽しいと感じた番組を継続的に見ていると、「ただシンプルに楽しい」とは別の感想を抱くようになります。製作者の意図、タレントの個性、流行しているものなどが自然と見えてきます。
興味が増幅して、たまたま見たい番組ではなく、「強い意志を持って見たい」と思えたら、それは立派な「楽しみとしてやりたいテーマ」となります。
テレビやYouTubeは見ているだけでよいので、とても楽です。楽で楽しいということは素敵なことだと思います。そして、テレビやYouTubeは流行や趣味の発見につながるような情報も発信しているので、思いがけず、自分に合った楽しみとしてやりたいテーマと出会うきっかけになるかもしれません。
最後は、友達に任せてしまうという考えです。テレビと同様に他力本願ですが、自分のことをよく知っている友人や世話好きな友人であれば、大いに期待できるはずです。
コンサルタントによる問題解決のように、さまざまな条件から合理的にテーマを特定していくのではなく、どちらかというと友達があなたの性格や適性を意識しながら一緒に楽しむことができるテーマを直感的に見つけるというイメージです。自分で考えなくて済む、友人と一緒に楽しむことができるというメリットがあります。
このときの注意点は、せっかく考えてくれたので、よっぽど嫌でない限りはひとまず受け入れる、ということです。あれもイヤ、これもイヤでは、相手が嫌な気分になります。第一感の評価が低くても実際に試したら想像以上に楽しかった、ということはいくらでもあります。食わず嫌いは、目の前の幸せを逃してしまうかもしれません。
一緒に実行したテーマは、きっと友人も楽しく感じるはずです。つまり、友人に委ねることは、自分のためだけではなく、友人の幸せにも貢献する可能性があるのです。
「お金儲け」が楽しみとしてやりたいテーマになるかどうか、少しだけ述べたいと思います。
一般的に、お金を稼ぐことは生活を維持するための手段であり、目的でありません。お金があるから幸せなのではなく、お金を上手に使って幸せを手に入れる、と考えるのが普通だと思います。しかし、世の中には貯金や投資が好きで、手段ではなく目的になっている人もいます。
もし、貯金や投資が幸せのレベルを評価する「ワクワク感」「達成感」「成長」「思い出」で高い点数になるということであれば、それは幸せにつながるテーマになります。
「趣味は貯金です」あるいは「お金儲けです」、とは言いづらいかもしれませんが、特に目的がなくても、貯金やお金儲けの行為が「楽しい」と感じるのであれば、立派な「楽しみとしてやりたいテーマ」です。
貯めたお金の使い道が決まっていなくても、お金があるということは大きな「可能性」があるということです。「あれもできる、これもできる」と考えるのはワクワクするはずです。そして、「これだ!」思えるテーマを見つけたら実行すればよいのです。
仕事も、お金と同じように目的ではなく生活をする(収入を得る)ための手段だと言えます。仕事を通じて楽しいと思う事や充実することはあるかもしれませんが、一般的に仕事は楽しみというよりも義務的な要素が強いはずです。宝くじが当たったらすぐにでも会社を辞めたいと考えている人は多いのではないでしょうか。
しかし、仕事が楽しくてしょうがないという人もいます。家でのんびりしているよりも仕事をしたい、給料の額とは関係なく仕事そのものが楽しいと感じている人たちです。
仕事と幸せのレベルについて考えてみると、充実した職場で成果を出していれば一般的に「達成感」と「成長」は高い評価点になります。後は、「ワクワク感」と「思い出」です。もし、仕事をするときにワクワクして、良い思い出になっている場合、その仕事は「楽しみとしてやりたいテーマ」であると言えます。楽しみとしてやりたいテーマを実行して給料がもらえるという一石二鳥のような状況ですね。
ただし、仕事の環境はいつ変わるか分かりません。仕事は受動的な要素があるので、マイナスの方向へ変化することもしばしばあります。そういう意味では、今、仕事が楽しくて充実しているとしても仕事以外で何か楽しそうだと感じたテーマがあれば、どんどんトライすることが大切です。
ここまで、具体例をいくつか紹介しましたが、人間は飽きる動物です。どんなに楽しいテーマでも飽きてしまう可能性があります。飽きることは悪いことではありません。生理現象のようなものです。飽きたら次のテーマを探す心持ち、あるいは飽きることを想定して複数のテーマを同時進行で実行するとよいでしょう。
楽しみとしてやりたいテーマがたくさんあることこそが幸せな人生を送るための条件なのです。